活躍する同窓生


「時代が動いた幸せ

 門倉基世子(高5回) 小説家(筆名 庵原高子)

2024年度、白百合学園「しらゆ里」71号が届いた。金銀祝式典報告、クラスのお便りに続いて、10月12日(土)直木賞作家・永井沙耶子様の講演会開催を、同窓会で開くというお知らせが掲載されていた。私は喜んで参加を決めた。時代が大きく動いて、我が母校も様々なジャンルに手を広げるようになった、有り難いこと、と感謝しながら……。

 

私の文學履歴を書かせていただく。24歳の時『降誕祭の手紙』という二人称の小説が「三田文学」誌に掲載され、すぐに「文学界」誌の全国同人雑誌優秀作として転載され、その作品が昭和33年下半期の芥川賞候補になる。その期は該当作なしで終わったが、それが庵原高子の出発点となった。

 

しかし未熟な年齢であった私は母校の白百合学園にそれらの報告をしなかった。創作の世界では平素口に出せない心の内を吐露することがある。文壇の評価があったとは言え、母校でその姿勢を理解していただけるか不安だった。戦後遠距離通学になった私は文学を語り合う友もなく孤独だった。2階の図書室で借りた芥川龍之介の本などを車中で読んだ。その後結婚して育児に追われペンを止めた時期もあり、9冊目の拙書『青あらし』を上梓した今日まで母校へお知らせしていない。この際謹んでお詫び申し上げる。そして当日永井様の講演後、その旨を同窓生の一人としてお話させていただく機会があり、拍手もいただき胸の閊えが下りた。


私はデビューが「三田文学」誌ということもあり、三田では色々とお仕事をいただいている。誌への作品掲載はもちろんだが、2010年代から10年ほど、三田文学・文学教室の講師を務めた。現在は神奈川通信三田会 読書同好会の講師を務めている。この2024年12月はカトリック作家グレアム・グリーンの『地下室』(映画では「落ちた偶像」)を取り上げ、次回は、被団協のノーベル平和賞受賞を記念して、原爆体験を書いた原民喜の『夏の花』を取り上げることになっている。私は1996年に通信教育課程で慶應義塾大学文学部を卒業しているので、勉強好きの後輩が集まってくる。『青あらし』に続いて2024年『〝二の舞を演じるな〟物語』を書いた。残された時間、さらに文学活動を続けていきたい。

 

私は幼稚園からの〝白百合っ子〟で幼児受洗者でもある。百合の聖母様、学園の先生方、永井様、同窓会の皆様、本当に有り難うございました。