活躍する同窓生


「白百合流の”virtue”(美徳)に支えられて」
 石坂千枝(高40回) クリスティーズジャパン日本支社元代表

1998年に世界の2大オークションハウスの一つとして知られるクリスティーズの日本支社に入社をし、2018年に退職するまでの20年間、同社で勤務いたしました。1766年に美術商のジェームズ・クリスティーによりロンドンに設立されたクリスティーズは、故ダイアナ妃が所有したドレスのセール(1997年)や、故イブ・サンローラン氏が遺したコレクションのセール(2009年)、また最近では、レオナルド・ダ・ヴィンチの≪サルバトーレ・ムンディ≫が、驚愕の510億円でクリスティーズのオークションで落札された(2017年)ニュースで、ご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

日本支社の役割は主に海外のオークションで売買される日本のお客様のサポートです。今ではオークションもかなり一般的になりましたが、わたくしが入社した当時は、海外のオークションはまだまだハードルの高いものでした。契約書を含む一切の書類や、海外にいるスペシャリストとのEメールも全て英語ですので、日本事務所のわたくしたちはリエゾンオフィスとして、海外と日本のお客様とのコミュニケーションが円滑になるようサポート業務を行いますが、正直、大変気を遣う仕事でした。社会的に立場のある方々や美術品の目利きであるお客様とのお仕事は毎日が勉強で、お叱りを受けることも多々ありましたが、素晴らしい美術品に携わる仕事ができたことは、何にも代え難い貴重な経験となりました。2018年10月に退社する5か月前にクリスティーズで開催された、ロックフェラー財団のペギー&デビッド・ロックフェラー氏のコレクションの売却(売却益は慈善団体に全額寄付)は、2000点に及ぶ美術品を1週間かけてオークションで売却。早朝から長い日は夜中まで続行したオークションには、パブロ・ピカソによるバラの時代の名品≪花かごを持つ女性≫の他、珠玉の名品が出品され、個人的にも大変思い出深いオークションとなりました。


2015年には日本支社の代表という大役も仰せつかりました。常に誠意を持って対応し、決して諦めない姿勢を評価いただいたのではないかと思っております。また、日頃から一流の方々に接するのですから、常に謙虚さや柔軟さも忘れてはなりません。知らない時は素直に知らないと伝える勇気を持つ大切さも実感しました。振り返りますと、これまでのわたくしを支えてきた、こうした”virtue”は、幼稚園から高校の15年間を過ごした白百合学園という学びの場で培われたのだと、卒業して35年近い歳月が経った今、つくづくと感じております。マ・スールや先生方の日頃のお言葉やお教えがあってこそ、国際的な場でも平常心を忘れずに責務を全うできたのだと、感謝の気持ちでいっぱいです。

現在はアートディーラーとして独立し、美術館や財団、個人コレクターのお手伝いをさせていただいております。白百合流の”virtue”を忘れずに、微力ではありますがこれからもアートの分野でお仕事を続けて参りたいと思っております。



<Q&Aコーナー>

Q1.校舎や通学路で思い出の場所はありますか?

毎日、靖国神社を通り抜けて通学したのがとても思い出に残っています。秋になると黄色く色づいた銀杏並木が見事でしたが、当時はその美しさに感動するよりも、落ちた銀杏のにおいが嫌で、鼻をつまんで走り抜けた記憶があります。

写真左がご本人


Q2.今も残している白百合時代の思い出の品などはありますか?

確か、高校の美術のクラスで製作したと思われる猫のエッチング(銅板)があるのですが、現在も家に飾ってあります。デッサン力も遠近感も全く無いアマチュアの作品ですが、11年飼っている猫にそっくりなので気に入っています。


Q3. 今後のライフプランについてお聞かせ下さい。後輩へのアドバイスもお願いします。

現在は個人で画商をやっておりますので、少しマイペースなかたちで、ゆっくりアートに携わっていければと思っております。

白百合のように守られた素晴らしい環境で過ごせることは大変貴重な経験です。学生時代はあっという間に過ぎてしまいますが、日々の学びや経験を大切にかみしめて、学生生活を送って下さい。