活躍する同窓生


「私を作る糧」
 永井紗耶子(高48回) 小説家

©新潮社

2010年に小説家としてデビューして、2023年で13年になります。2020年、コロナ禍で発表した『商う狼 江戸商人杉本茂十郎』が、本屋が選ぶ時代小説大賞、新田次郎文学賞などの文学賞をいただき、2022年に発表した『女人入眼』は、直木賞候補として、御高評を賜りました。

この『女人入眼』という作品を書くきっかけは、正に白百合学園の図書室で出会った本でした。歴史に関心があり、様々な本を読み漁っていた時、図書室にあった永井路子さんの『炎環』という、鎌倉時代を描いた作品に出会い、その世界に魅せられました。「もっと知りたい」という私の想いに、図書室の本たちが応えてくれたおかげで、高校一年生の夏休みに、初めての歴史小説を書きました。それが、コンクールに入賞し、作家に憧れていた当時の私に大きな力をくれました。

近著『女人入眼、新刊木挽町のあだ討ちなど


また、学園生活は私に、創作し、発表する喜びをたくさん与えてくれました。
中学校の演劇の発表会では、『シンデレラ』の喜劇の脚本・演出を。また、高校の前夜祭でも、コントの脚本・演出をさせていただきました。当時、私の無茶なリクエストにも応えてくれた同級生たちと会うと、今でも時折、
「あの台詞には笑った」
「あの演出はひどかったよねえ」
などと、笑い合うことがあります。

 

そんな学園での他愛のない同級生たちとの時間を重ね合わせて書いた作品に、『大奥づとめ』という小説があります。大奥をいわゆる「愛憎渦巻くドロドロ」としてではなく、それぞれに自分らしさを見つけて働く場として描いたものです。講演などで、
「女子校での暮らしを思い出しながら書いたんです」
と、お話すると、読者の方からも、
「分かります。私も女子校なので。楽しかった思い出がよみがえります」
と、おっしゃっていただくこともあります。

中学高校の六年間、友人たちと過ごし、豊かな文化に触れた日々が、今の私を作る糧になっていると思っています。

 

これからも、幾度となくこの日々を振り返りながら、創作に精進してまいりたいと思っています。

高校の修学旅行にて



<Q&Aコーナー>

Q1.校舎や通学路で思い出の場所はありますか?

図書室です。自分の好みの作品はもちろんですが、普段、書店では見られないような本との偶然の出会いもありました。また、友人から勧められて大好きになった作品もあります。今の私を作ってくれた大切な場所です。

Q2.今も残している白百合時代の思い出の品などはありますか?

メダイです。家族と共に訪れたシャルトル大聖堂で買いました。聖母子像が刻まれていて、学生時代にはほぼ毎日、身に着けていました。今でも時々、愛用しています。

Q3. 今後のライフプランについてお聞かせ下さい。後輩へのアドバイスもお願いします。

おかげさまで、小説のご依頼をいただくことも増えました。今後とも、私らしく作品を創り続けていきたいと思っています。学生時代は、心に正直に生きられる貴重な時間だと思います。みなさんも、たくさんの好きなものや楽しいことを見つけてください。それが、これから先の人生を支える力になります。

学園祭準備中の一枚